某市職員の引継ノート

後輩に引き継ぎたい事項を記載したものです。

外国人学校振興補助金不交付処分取消等請求事件

大阪府及び大阪市外国人学校を運営する法人に対して行った私立外国人学校振興補助金不交付決定が、いずれも抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらないとされた例。

以下、第一審判決より。

2 争点1(本件A府不交付の処分性)について
(1) 抗告訴訟の対象となる処分について
 抗告訴訟の対象となる処分とは、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」であり(行政事件訴訟法3条1項、2項、6項)、これは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう(最高裁判所昭和39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)。
(2) 本件A府不交付について
ア 地方公共団体が私人に対して補助金を交付する関係は、地方公共団体が、その優越的地位に基づき公権力を発動して私人の権利自由を制限し又はこれに義務を課するものではなく、本来、資金の給付を求める私人の申込みに対する承諾という性質を有する非権力的な給付行政に属するものであるから、その関係においては、原則として、行政処分は存在しないものというべきである。もっとも、法令等が、一定の政策目的のために、特に一定の者に補助金の交付を受ける権利を与えるとともに、補助金の交付手続により行政庁に当該者の権利の存否を判断させることとした場合や、法令等が補助金の交付手続を定める中で行政庁による不交付決定に対して不服申立手続を設けているような場合などには、例外的に補助金の交付決定に処分性が認められるものと解される。
イ 弁論の全趣旨によれば、本件A府不交付は、私立学校法64条5項により準用される同法59条、私立学校振興助成法16条により準用される同法10条及び地方自治法232条の2に加え、A府交付規則、A府要綱に基づいて行われたと認められる。このうち、地方自治法232条の2には、公益上の必要がある場合という要件のほか要件・効果の定めがない。その趣旨は、どのような者にどのような補助を行うかの判断を、地方公共団体の執行機関等が社会的・地域的事情を総合的に考慮して行う公益上の必要に関する政策的な裁量に委ねたものと解するのが相当であり、一定の者に補助金の交付を受けられる地位を与える趣旨を含むものとは解されない。
 また、私立学校法の上記各規定は、地方公共団体が教育の振興上必要があると認める場合に、別に法律で定めるところにより、準学校法人に対して必要な助成をすることができる旨を定め、これを受けた私立学校振興助成法の上記各規定が、地方公共団体準学校法人に対して補助金の支出等を行い得る旨を定めているが、これらの法令にも、どのような準学校法人がどのような事業を行う場合にどの程度の補助金を支出するのか、具体的な要件・効果に関する規定は見当たらない。さらに、上記各法令には、準学校法人に対する補助金の支出等の具体的な手続を定める規定や、これに補助金の交付等の請求権・申請権を認める規定、不交付決定に対して不服申立手続を設ける規定等もなく、そのような規定の制定等を地方公共団体に委任する規定も見当たらない。これらのことを総合すると、私立学校法及び私立学校振興助成法の上記各規定は、地方公共団体準学校法人に対して補助金の支出等ができることを規定したにとどまるものと解するのが相当であって、上記各法令の規定が、準学校法人に対し、補助金の交付を受ける権利や補助金の交付申請権を与える趣旨を含むものと解することはできない。
 そして、A府交付規則は、私立学校法私立学校振興助成法及び地方自治法等の委任によらず、また、条例(地方自治法14条)の形式によることなく、補助金の交付の申請、決定等に関する基本的事項を一般的に規定するもので、不交付となった場合の不服申立てについても規定がない。これらの事情に照らせば、A府交付規則及びA府要綱は、A府内部の事務手続を定める趣旨を超えて、対象者に当該補助金の交付を受けることのできる法的権利を認める趣旨を含むものとは解されない。
 さらに、他に本件A府不交付に法令等が行政処分としての性質を与えたと解する根拠は見当たらない。
ウ したがって、本件A府不交付は、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定することが法律上認められているものとはいえないから、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(行政事件訴訟法3条1項、2項、6項)に当たるとは認められず、抗告訴訟の対象となる処分に該当しない。
 上記に反する原告の主張(前記第2の4(1)(原告の主張))は、採用することができない。
(3) 小括
 そして、原告は、行政事件訴訟法3条6項2号及び37条の3所定のいわゆる申請型の義務付けの訴えとして、本件23年度A府補助金の交付の義務付けを求めるところ(請求1(1)ア(イ))、上記のとおり、本件A府不交付は「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(行政事件訴訟法3条1項、2項、6項)に当たるとは認められないから、本件A府不交付と表裏ともいうべき関係にある本件23年度A府補助金を交付する旨の決定についても同様に解されるのであって、抗告訴訟の対象となる処分に該当しない。そうすると、その余の点について判断するまでもなく、本件訴えのうち本件A府取消等請求に係る部分は不適法といわざるを得ない。