某市職員の引継ノート

後輩に引き継ぎたい事項を記載したものです。

國井義郎「バイオマス事業補助金の一部返還に関する損害賠償請求住民訴訟控訴事件」

國井義郎「財政法判例研究第24回バイオマス事業補助金の一部返還に関する損害賠償請求住民訴訟控訴事件 東京高裁平成29年1月26日判決(平成28年(行コ)第162号)(判例地方自治431号24頁)」『地方財務』790,2020年4月,ぎょうせい編,pp.212-221 を読んでの感想。

※p.213「原判決の判旨―請求認容」「■一 争点○1国庫補助金相当額の返還の違法性」中「間接補助事業者等が間接補助事業等により取得した財産の処分について制限を課す規定であり、」は、誤りのため削られるべき記載と思われる。

事件の概要

  1. 国・栃木県・宇都宮市・事業者が関わるバイオマス施設補助金訴訟、高裁判決の解説。以下、栃木県を県、宇都宮市を市と略す。

  2. 国庫補助金が国から県に交付され、以下、県から市、市から事業者に交付され、堆肥化施設が建設された。

  3. 堆肥化施設への担保権設定について、国・県・市はこれを承認した。

  4. 事業者の事業がうまくいかず担保不動産競売開始決定がなされたため、事業者は市に、市は県に、県は国に財産処分の承認を申請した。

  5. 財産処分承認は、事業者・市間、市・県間、県・国間にて、それぞれ国庫補助金相当額の納付を条件としてなされた。

  6. 県は、国の求めに応じて国庫補助金相当額を返納したが、市は県に県補助金相当額を、事業者は市に市補助金相当額を返還しなかった。

  7. 県は、市に県補助金相当額の支払を求める訴えを起こしたが棄却された。

  8. 市民オンブズパーソン栃木は、県の国に対する返納が違法な公金の支出であるとして、当時の県知事に損害賠償を請求することを求める住民訴訟を提起した。

※この訴訟のほか、県が国に対して、返還した国庫補助金相当額の返還を求めたものもある。

行政処分性について

補助金適正化法に基づいて補助金交付決定や財産処分の承認がなされた場合には、当該決定や当該承認は行政処分となる。しかし、補助金適正化法に基づかずに補助金交付決定や財産処分の承認がなされたときは行政処分ではなく負担付贈与契約関係において処理される(山村恒年・判自421号88頁)。このように、行政実務においては、一方では、国による補助金交付決定については、補助金適正化法に基づく行政処分と構成し、これに対して担保権行使の制限を附款として付することを容認していた。他方では、自治体による補助金交付決定については、負担付贈与契約と構成し、担保権行使の制限は契約に付された負担と解していた。

筆者は、「条例または規則に基づく補助金交付についても、処分性を認めるべき」と主張している。「要綱」は挙げられていないため、おそらく要綱補助にまで処分性を認めるべきとは考えていないものと推測される。

補助金適正化法に準じた内容の規則を定めている自治体が多いと思うが、これによる交付決定等が行政処分になるのかどうか、今後の判例動向等の注視が必要である。

国から自治体に対する補助は行政処分であり、自治体から自治体・事業者に対する補助は負担付贈与契約である、という点も理解されにくく、救済の手段が異なってくるのも合理性を欠くのではなかろうか。

補助金適正化法22条の関係

補助金適正化法  (財産の処分の制限)
第22条 補助事業者等は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない。ただし、政令で定める場合は、この限りでない。

この規定は、「補助事業者等」に対する規定であることは明らかであり「間接補助事業者等」にはそのまま適用とはならない。

一方で、補助金等の交付の目的を達成させるという法の求める趣旨は、当然に間接補助事業者等にも及ぶのであって、第22条と同様の一定の制限は必要である。この点、後に県が国を提訴した訴訟にて、財産処分の承認の根拠が第22条ではなく第7条第3項であるする、いわゆる「違法行為の転換」を適用するという解釈が行われた。

 補助金等の交付の条件) 第7条 各省各庁の長は、補助金等の交付の決定をする場合において、法令及び予算で定める補助金等の交付の目的を達成するため必要があるときは、次に掲げる事項につき条件を附するものとする。
(1)~(5) 略
2 略
3 前二項の規定は、これらの規定に定める条件のほか、各省各庁の長が法令及び予算で定める補助金等の交付の目的を達成するため必要な条件を附することを妨げるものではない。
4 補助金等の交付の決定に附する条件は、公正なものでなければならず、いやしくも補助金等の交付の目的を達成するため必要な限度をこえて不当に補助事業者等に対し干渉をするようなものであつてはならない。

所感

  1. 国庫補助金を財源とする間接補助事業を実施する場合、交付決定や変更決定に付された条件について、その条件の根拠規定(第22条なのか第7条第3項なのか、又はその他なのか。)を十分に確認すること。

  2. 間接補助事業者に対する交付決定に付する条件についても、十分に吟味すること。当然ながら、条件の記載漏れなどあってはならない。

  3. なお、自治体が付する条件は、行政処分の附款ではなく、負担付贈与契約に係る条件となるはず。この点、もう少し整理が必要と感ずる。

  4. 間接補助事業で事業がとん挫することは、十分に起こりうる。その場合の補助金の返還義務はどのように誰が負担すべきなのか。競売等の財産処分により返還された金額のみを事業者→市→県→国と返還するのであれば理解しやすいが、事業者から市に対して補助金相当額の一部(又は0円)しか返還されなかった場合でも、市は県に全額返還すべきなのか。そうであれば、市にとって間接補助事業はリスクが大き過ぎ、一切手を出せなくなってしまう。

  5. 補助金適正化法第7条第4項の「公正なもの」がどこまで許容されるのか、事業担当者は注意が必要だろう。